いまから1200年余り時をさかのぼる794(延暦13)年は、京都に平安京が開かれた年です。それより前の10年間、長岡京という幻の都が存在していました。遙かなる歴史の名残を伝える長岡京市に、時の流れを止めたかのようなレトロな空間と、ボリュームたっぷりの多彩なメニューで地元の人から観光客まで世代を超えて愛されている「喫茶フルール」があります。長岡天満宮や、柳谷観音、光明寺など長岡京の名所とあわせて、名喫茶を訪ねてみませんか。
京都中心部から西の長岡京へ
三角屋根とアクセントカラーのオレンジが目印
最寄り駅は、阪急京都河原町駅から西へ9つ目の長岡天神駅。駅のホームから見える緑色の屋根とオレンジ色の看板を目指し、西出口から歩いてすぐです。JRを利用する場合は、京都駅から4つ目の長岡京駅で降り、西へ歩いて15分ほどで「喫茶フルール」に到着。扉を開ければ、そこには昔懐かしさが香るレトロな空間が待ち受けています。
かつてガレージだった場所は木陰が心地いいテラス席に
正面玄関前のショーケース
シャンデリアが煌めく店内
設計時には星空が見られるように、という計画もあったのだとか
全長240m(!)もある特注品のビロードをドレープ状に張った三角天井には、大きなシャンデリアが煌めきます。シャンデリアの下には生花が飾られ、小さな池には金魚が悠々と泳いでいます。 こちらは、オーナー兼シェフの岡本孫三さんと、スタッフや常連さんから「ママ」と呼ばれて慕われている幸子さんご夫妻のお店。大阪万博の前年1969(昭和44)年の創業で、オーナーみずからこの空間を設計したのだそうです。
天井に煌めくシャンデリア。ずっと眺めていたくなる
壁を照らす照明も素敵
ほかの純喫茶では見られない珍しい壁面デザイン
プリンが仲良く並んだ人気メニュー
「ダブルプリン」1200円。ガラスの器も昔のまま
ママさん曰く「ひとつではもの足りんやろ(笑)」と、ふたつ並べた「ダブルプリン」がスイーツで一番の人気メニュー。卵、牛乳、砂糖、香りづけのバニラエッセンス。昔から変わらないシンプルな素材とレシピで毎日手づくりしています。
スプーンですくって口に運ぶとカラメルの芳醇な香りと卵のやさしい風味が広がる
ボリュームたっぷりの洋食ランチ
「フルールランチ」1250円
オムライス、カレー、ピラフ、グラタン、スパゲッティなど王道の洋食メニューがそろいます。フードメニューだけで40種も! ランチと名の付く「フルールランチ」は、営業時間中いつでも注文できます。ジューシーなメンチカツ、大きなエビフライ、外はサクッ、中は口当たりのなめらかなクリームコロッケが並んだ、ボリュームたっぷりのひと品です。
店名のフルールとは、フランス語で「花」を意味します。そこに咲いているだけで人の心を潤おす一輪の花のように、喫茶フルールもこの場所で半世紀にわたって咲きつづけているのでしょう。