奈良・東大寺の北、築100年のノスタルジックなカフェ「工場跡事務室」で、心ほどける朝食や大和茶を

奈良の世界遺産・東大寺の北側に、竹林を借景とした素敵なカフェ「工場跡事務室」があります。大正時代に人びとの健康と長寿を願って建てられた乳酸菌飲料の工場跡であり、国の登録有形文化財に認定された趣深い建物が魅力。時の流れを止めたかのように静かな空間で、奈良の大和茶をはじめ、心づくしの朝食やランチをゆったりと味わえます。東大寺や春日大社への参拝や、奈良公園のお散歩とあわせて立ち寄ってみてはいかが。

世界遺産・東大寺北の閑静なエリアへ

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「焼門前」交差点から徒歩2分ほど、小さな川沿いに建つ

近鉄奈良駅から北東方面へ15分ほど。「焼門前」交差点から東大寺の二月堂裏参道へとつづく道を東へ進むと、ほどなくして木造の平屋が現れます。こちらは、オーナーである喜多和夫さんのひいおじい様が、1925(大正14)年に創業した長壽會(ちょうじゅかい)細菌研究所の工場跡。乳酸菌飲料「フトルミン」の研究開発・製造のほか、椎茸菌やイースト菌(パン種)など食用菌類の研究が行われていました。

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2020年、「旧長壽會細菌研究所工場および製品庫」として国の登録有形文化財に認定された

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向かって右側がカフェの入り口

大正時代に建てられた工場を再生

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引き戸を開けると、タイムスリップしたような心地に

1970年代後半に工場が閉鎖となってから30年以上そのままになっていましたが、「工場内の備品類を整理したり、1万本以上あった空き瓶を洗ってきれいにしたり。一年かけて隅々まで掃除した後、建物とあらためて向き合ったとき、建物を使いながら保存していこう。新しいものにはつくり出せないここだけの空気感を楽しんでもらおう、と考えました」。2009年、工場跡はカフェとして新たな時を刻み始めました。

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靴を脱いで過ごせる畳敷きの部屋は、かつての事務室

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看板商品だった「フトルミン」。ラベルのデザインもレトロで味わい深い

かつての事務室には、「フトルミン」の瓶が展示されています。胃腸の調子を整えるとして国内のみならず、当時日本人が住んでいた満州にも納品されたという「フトルミン」。その商品名からは、食べものがじゅうぶんでなく、太ることが健康や幸せの象徴であった戦前戦後の時代背景が伺えます。

事務室の隣は荷造室

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元荷造室はカウンター席とテーブル席に。窓に映るすがすがしい緑は、東大寺の竹林

建物は、ひいおじい様と親しかった縁から、日本聖公会奈良基督教会(重要文化財)を手がけた宮大工の大木吉太郎氏が設計を行いました。名工の技を凝らした空間は、100年を経た今も、朽ちるどころか趣を増すばかりです。

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季節の花一輪がそっと飾られたテーブル席

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空間を照らす切子ランプは、日本最高齢のガラス切子職人・藤本幸治氏によるもの

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藤本幸治氏が工場に残っていた瓶で作ってくれたというランプも

予約して味わいたい朝食

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「朝のセットメニュー」1760円。予約の場合は1650円になる

土・日曜と祝日限定の「朝のセットメニュー」は、食前のひと口ジュース、発酵バタートースト、季節のサイドメニュー、工場の乳酸菌飲料にちなんだヨーグルト、選べるドリンクが付く、ホテルメイドのように上質な朝食です。「宿泊施設ではブッフェが主流になっていますね。こちらでは、フルサービスによる贅沢な時間をゆっくりと過ごしていただければ」と喜多さん。ホームページまたは電話で事前に予約のうえでのおでかけをおすすめします。

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自家製のジュースや、ジャム、マーマレードも名脇役

奈良の魅力が伝わるドリンクメニュー

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「大和茶と白玉だんごのセット」(ほうじ茶ラテ)1100円。あんは、粒あん、ずんだあん、マロンあん(春は桜あん)の3種

ドリンクメニューは、奈良の香豆舎が焙煎する工場跡オリジナルブレンドのスペシャルティ珈琲、月ヶ瀬・久保田農園の和紅茶、無農薬・有機栽培で育てられた竹西農園の上ほうじ茶を使ったほうじ茶ラテなど、奈良にゆかりのあるものがそろいます。老舗製餡所の3種のあんをのせた白玉だんごとのセットがおすすめ。 ランチタイムには、「ツナと卵サンドイッチ」、「パストラミサンドイッチ」のセットメニューのほか、ピザトースト、発酵バタートーストが用意されています。

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自家製梅シロップの「梅ジュースのソーダ割り」770円。炭酸水を自分で注ぐので、好みの濃度にできる

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「工場跡ブレンド珈琲ドリップパック」各200円はおみやげに人気

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工場の青図を生かした「青図封筒」3種セット550円、ヴェネチアンガラスで1点1点手作りした「フトルミンストラップ」各800円

カフェの向かいは研究室や作業場

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工場内には、オートクレーブ(蒸気窯)や重油ボイラーなど当時のままの機器が残る

カフェの向かいに建つ研究室や作業場は、これまでイベント時を除いて通常非公開でしたが、来春以降の常時公開に向けて準備をしているようです。

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作業場に隣接する研究室へ

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研究室では試験管や瓶など備品類を展示。時折ギャラリーとして活用されることもある

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大正レトロなデザインの商品ラベルや宣伝資料も展示

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